議会活動

■2006年(平成18年)6月議会 一般質問

<パブリック・コメント手続とは>

木村 私は、通告いたしました「パブリック・コメント手続の制度化について」質問させて頂きます。同趣旨の質問が一昨年の第4回定例会において同僚議員よりありました。その時の審議も踏まえ、質問いたします。

昨年6月、行政手続法が改正され、パブリック・コメント手続がついに法制化されました。このことは、一般的に私たち自治体においても、意見公募手続の条例化と、これまで未整備または要綱どまりであった同手続の仕組みを条例レベルで整理することが期待されているということを意味していると言えるでしょう。

パブリック・コメント手続または行政立法手続の法制化をめぐる議論は1960年代の旧行政管理庁の時代にまで遡ります。当初から、この問題に対する霞ヶ関の抵抗は強く、1993年に行政手続法が制定された際にも、その対象は国民の権利義務に直接係る処分、行政指導、届出などに限定され、計画策定手続、強制執行手続、政省令制定などのいわゆる行政立法手続に関する法整備は見送られたという経緯がありました。しかし、その後、規制改革をめぐり経済界やアメリカ政府から意見公募手続導入の要望書が出されるなど、同手続の制度化を望む声は拡大していきました。そして、1998年、中央省庁等改革基本法に「政策形成に民意を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、重要な政策の立案に当たり」意見公募を行なうとうたわれ、翌年、政府は画期的にも「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」を閣議決定し、政省令や告示のほか行政手続法上の審査基準や処分基準などを対象として、パブリック・コメント手続が行政措置として実施されることとなりました。

この閣議決定は、のちに地方自治体がパブリック・コメント手続を広く導入していく端緒になったと言われています。実際、1999年には鳥取県が「意思決定前の政策案の公表事業」を、2000年には滋賀県が「滋賀県民政策コメント制度に関する要綱」を施行し、以後、要綱レベルではあるものの自治体におけるパブリック・コメント手続の導入が徐々に広がっていきました。そして、全国に先駆けて2001年、つまり国が行政立法手続を法制化させるよりも4年早く、横須賀市は「横須賀市市民パブリック・コメント手続条例」を制定しました。

行政手続法46条には、自治体は「処分、行政指導並びに命令等を定める行為に関する手続について」「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定されています。現在、普通地方公共団体の99パーセント以上が、また我が区を含む特別区の全てが、行政手続法上の適用除外とされた処分、行政指導、届出について、それぞれ努力義務を履行しています。しかし、昨年の同法改正により今後は、命令等、すなわち規則、審査基準、処分基準、行政指導指針等の制定手続にあたっても、また、恐らくは後述するように住民の権利義務に係る条例案や計画案についても、「公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずる」ことが期待されているのです。

 

<江戸川区の方向性>

木村 自治事務に関する限り、地方分権の観点からは、法律が変わったからといって自治体が国に「右へ倣え」をする必要はもちろんありません。むしろ独自性を発揮しながら全ての自治立法は整備されていかなければなりません。しかし、ことパブリック・コメント手続に関する限りは、行政立法あるいは自治立法過程の透明化への要請にこたえる法制化であり、憲法92条「地方自治の本旨」の構成要件のひとつと言われる「住民自治」の促進でもあります。ぜひとも積極的にルールづくりを検討していきたい制度です。

 江戸川区は「共育・協働・安心」の三本柱のもとに街づくりを進めてきました。パブリック・コメント手続は、中でも「協働」という考え方の具現化と言えるでしょう。また実際に、区では基本構想、総合人生大学、個人情報保護条例改正、子育て支援などの計画策定段階においてパブリック・コメント手続の実績を積んできました。そして、前回の同僚議員による質問に対し、区長は「前向きに研究を進めて、早い機会にこういったパブリックコメントについて」制度化を図っていきたいという趣旨の答弁をされておりました。あれから一年半がたちましたが、まだ具体的なルールづくりには至っていないようです。そろそろパブリック・コメント手続の制度化を具体的に示す時期ではないでしょうか。区長の考えをお聞かせ下さい。

区長 今、お話がありましたように、区はこれまでも実際の場面でいろいろな案件についてパブリックコメントをやってきましたので、当然のことながら、ぜひ続けていきたいと思っております。

                                

<江戸川区の考え方と今後の課題>

木村 制度化においては、いろいろなレベルのルールづくりが考えられます。国においては閣議決定という内閣レベルの規定から、国会審議を経る法律という高レベルの法として取り扱いました。我が区においては現在、パブリック・コメント手続に関しては、内規自体も存在しておりません。願わくば要綱等の内規レベルの決まりとしてではなく、ぜひ自治体における最高法規たる条例として整備したいと思いますが、区長はどのようにお考えでしょうか。

我が区には1995年制定の、処分、聴聞、行政指導、届出等を整理した行政手続条例があります。これを活用するというのも有用でしょう。あるいは、横須賀市、神戸市などのようにパブリック・コメント手続に特化した条例や要綱を準備してもよいかもしれません。また、京都市、西東京市などのように市民参加推進条例やニセコ町や杉並区などのように自治基本条例などでパブリック・コメント手続を条例化している例もあります。

いずれの場合でも、制度化にあたってはいくつかの留意すべき点があります。まずは、この条例や要綱自体をパブリック・コメント手続を経て制定すべきであるということが大切でしょう。他には、意見公募を求める事項の対象範囲が十分であるかということ、住民に対する意見公募の周知期間や告知手段が十分なものとなるよう検討されること、意見公募をいつの段階で行うかという手順の整理、関連資料の公表のあり方、寄せられた意見をどこでどのように審議するのか、またその実施状況の報告をどのように行うのか、実施機関に出資法人などの外郭団体なども含めるのか、などについて、順次検討をしなければなりません。

もうひとつ触れておきたいのは、自治体におけるパブリック・コメント手続の対象立法の先進的な特徴についてです。国では意見公募の対象を行政立法に限っているのに対し、ほとんどの自治体のパブリック・コメント手続においては、その対象範囲に、条例案や計画案が含まれてきたのです。この特徴は我が江戸川区においても同様に見られてきたものです。

国が行政立法に限定したのは国会への配慮からでしょう。自治体でも、条例案の審議にあたって、議会が大きな役割を果たしています。しかし、パブリック・コメント手続と議会との共存関係は、意見公募のタイミングを条例案の素案段階に設けることで十分整理が可能です。むしろ、私たち議会自らが、間接民主制も決して完璧な政治制度ではないということを認識しなければなりません。間接民主制は効率性の観点から現代政治制度の英知を集めたいわば次善の策であり、パブリック・コメント手続には議会審議を経ない政策への市民参画という意義とともに、間接民主制の限界部分を補完するという意味もあると理解すべきでしょう。パブリック・コメント手続の制度化は、我々議会に対しても多くの問題提起をしてくれる制度です。我が区においても、できるだけ早期に、パブリック・コメント手続が成文のルールとして制度化されるのを願っております。

区長 どういうルール化をするかということに関してでありますが、今回、本年四月から施行されました改正行政手続法というものがあります。いっぽう、それ以前の旧行政手続法と相対する行政手続条例というのが存在すると思いますが、国は今回の改正によって法律の幅を広げたということだと思います。

 自治体もこういうことに取り組むことが望ましいということですので、ここは確かにはっきりとこうしたことをルール化した方がいいという考え方は当然だと思います。

 問題は方法論と、まず既に存在する条例改正でいくのか、あるいは新たな単独条例をつくるのか、あるいはまた条例以外の規定で定めるのかなど、いろいろあると思います。そういったことを、今おっしゃったような議会審議との関係においてどう考えるか、また対象をどの範囲にまで広げるかということを検討しなければなりません。国は、法律と計画を除いてしまいました。こうしたことを議論しなければなりません。

 私どもが、例えば条例の制定や改廃すべてを対象にした場合、果たして現実的かという問題もあります。条例制定、改廃はかなりの量がありまして、中にはパブリックコメントをするということに馴染むだろうかというものも多々あります。内容によっては、形式的にやっても意味がないと思います。

 ですから、仮にやるとしても、どういう範疇のものを、条例の制定・改廃は対象とするのか否かも含めて、議会の皆さんのご意見も聞きながら議論を進めていかなければなりませんので、あまり性急に結論を出すのはいかがなものかとも思われます。もちろん、あまり時間もかけたくはありませんので、ご意見も伺いながら、慎重に検討したいと思います。

木村 「慎重に考えたいが、余り時間もかけたくない」という、やや玉虫色のお答えでした。もっとも、「整理をしたい、ルールづくりをしたい」というご意思とスタンスは、以前の同僚議員の質問に対する答弁からも推測されるように、お持ちなのだと拝察します。

 確かに、どこまでの対象範囲で、条例なり要綱なりにするのかというのは、多分一番難しい点だと思います。ただ、個人情報保護条例の制定・改正が国よりも自治体先行型であったように、江戸川区でもそうですが、自治体では、国とは違って素案の段階、計画案の段階でパブリック・コメントを求めるという前例が随分と積み上げられてきています。私は、結構踏み込んでもいいのではないかなという感想を持っております。こうした点も考慮しながら、できるだけいいものを早い段階でつくっていただければと思います。

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