議会活動

■2002年(平成14年)12月議会 一般質問

<電子投票の広がり>

木村 今年六月、岡山県新見(にいみ)市長選挙・市議会議員選挙において、全国初の電子投票が実施された。全国初の試みでもあり、将来普及していくであろう電子投票システムの試金石として、多くの注目を集めた。当日は大きな混乱もなく、投開票作業は効率的に行なわれた。

 我が国における電子投票の導入は、今年二月の公職選挙特例法、いわゆる電子投票法の施行によって可能となったもの。同法においては、地方選挙に限って電子投票が導入できるように認められた。新見市での電子投票実施は、電子投票法施行に伴う実施第一号だ。

国際的な趨勢では、電子投票は現在、オランダ、イギリス、アメリカ、といった世界の十二カ国で実際に導入されており、さらに、フランス、オーストラリア、フィリピン、といった四十二カ国で導入の具体的準備が進んでいる。

電子投票制度の導入が世界的に拡大しているのは、そこに相応のメリットがあると評価されているからにほかならない。

電子投票導入による最大のメリットは、開票の迅速化とそれに伴う人件費の削減効果である。

新見市長選・市議選の場合、電子投票分の開票作業はたったの二十五分で終了。そして、各投票所からの記録を集計する作業を経、最終的な確定得票が判明したのは、開票開始からおよそ二時間後。これは、従来の開票作業時間のおよそ半分。

開票の迅速化は同時に、開票作業に伴う人件費の削減という行政コストの節約に直結する。同市の試算では、この電子投票による一回の開票作業によって、約二百万円の人件費の削減になるとしている。電子投票システムの最先進国であるオランダでも、財政削減の効果をうたう評価の声がある。オランダでは1974年の最初の導入以来、今では、およそ五百ある同国の地方自治体の九割が電子投票を導入ずみ。オランダの自治体関係者の話によると、投票端末機を四、五回も使用すれば、電子投票機に対する初期投資のもとがとれると言う。

人口六十四万人、有権者五十万人を抱える江戸川区においては、来年度の区長選挙・区議会議員選挙の実施に伴って、およそ二億円の経費がかかると予想される。そのうち、四千万円前後が投開票作業に伴う人件費に要されるだろう。こうした経費を考え、電子投票導入についてはどのように思うか。

区長 一般論として、私も電子投票に興味と感心を持っている。木村議員は大変研究しており、いろいろ知識をお持ちだと思う。ただ、電子投票のメリットとそれに要する経費とのバランスの中で考えないといけない。選挙事情は異なるし、外国で実施しているからそれが先進的かどうかは分からない。

木村 外国の制度とは単純に比べられないという指摘はそのとおりだ。しかし、産業の発展はボーダーレス、トランスナショナルであり、情報技術の進展も同じだ。だとすれば、電子投票による基本的メリットは国の文化を超えたところで必ずあるはずだ。

<電子投票のメリットとは>

木村 他のメリットもある。まず、自書式投票からの転換に伴い、これまでともすると判読や解釈の難解であった疑問票や無効票というものが完全に排除される。案分票もなくなる。

また、投票用紙の交付が電子管理となるため、投票用紙の手違い交付、あるいは偽造による不正投票というものも確実に排除できる。

また、電子投票はバリアフリーにも効果を発揮する。電子投票機は、視覚障害者や肢体不自由者の投票にも対応できる。同時に、代理投票による秘密投票の権利の侵害をかなり軽減させることができる。投票データはデジタルデータとしてランダムに記録されるので、投票の秘密性を極めて高いものとしてくれる。

その他にも、投票箱、開票所の設営に係る経費などを確実に削減することができる。これまで、徹夜に近い投開票事務の後で多少なりとも出ていたであろう翌日の窓口サービスへの影響も、電子投票の導入により軽減することができる。

 こうした多くのメリットのある電子投票であるが、その導入にはそれなりの初期投資費用がかかる。その初期投資の負担によって、自治体が電子投票を導入することに二の足を踏まないよう、国は補助制度を整備している。総務省では電子投票機の購入費やレンタル費などへの半額補助制度を整えた。

 これまで述べてきたような、電子投票導入によるメリットを再検討する中で、区長は電子投票導入の見通しについて、どのように考えるか。

区長 現在、国政選挙では採用できないので、自治体がそれをこなす能力を持たなければならない。できる自治体はやってくれ、ということだと推測する。しかし、今はまだ開発間もないので、相当高価なものにつくと思う。普及するのを待てば、コストは安くなると考えられる。早く導入したらかえって損だとも考えられる。いつ、どのように始めるかは難しい問題。これから調査・研究すべき課題だ。

木村 電子投票のメリットとして、財政効果、投開票作業の迅速化、バリアフリーなどについて挙げた。区長は単価の高い早期導入は損だとおっしゃる。私が電子投票の問題を取り上げているのは、それら欠点にかえられないメリットがあると思うからだ。以前、他会派の同僚議員がこの問題を取り上げたのも、同じ姿勢を持っていたからだと思う。

 

<電子投票における諸課題>

木村 電子投票の導入においては、もちろん利点ばかりではない。課題も存在する。

 端末機におけるハードウエアの問題、投票所と開票所、あるいは集計所との間のオンライン化とセキュリティの問題。そのほか、候補者数がおよそ六十人にものぼるであろう我が区の区議会議員選挙のような場合には、タッチパネル上の候補者名の表示方法などに工夫が必要だ。表示上の平等性と見やすさとをできるだけ同時に満たす必要がある。

 また、制度上の根本的な課題として、電子投票の対象がまだ法的に地方選挙に限定されているため、単純に言えば、四年に一度しか電子投票機を活用する機会がないため、コスト削減の効果が期待ほどに高まらず、導入意欲が抑制されてしまうという問題点が残っている。

 電子投票法はまだ成立間もない新法であるが、電子投票の導入による、私たち自治体の行政コスト削減の実効性を速やかに実現させるよう、地方選挙、国政選挙を問わず、電子投票機が活用できるような法制度の整備が必要である。そのためにも、国政選挙においても電子投票を導入できるように電子投票法の法改正を行うよう、区長会などで積極的に提言されてみてはいかがか。

区長 ご案内のように、選挙管理委員会という行政機関が存在し、選挙の運営に関する事柄は選管の専任事項だ。私がどうあるべきだと発言すると、選挙管理委員会から批判を受ける。もちろん、条例化・予算化する際には、区としても選挙管理委員会との意見調整が必要になってくる。ただ、今この場でどうすべきと私が発現するのは越権行為になりかねないので、差し控えたい。

 聞くところでは、選挙管理委員会もいろいろ研究しているとのこと。しかるべき時期には意見交換をすることになると思う。ここでは、こういう答弁でご勘弁いただきたい。

木村 選挙管理委員会の独立性というのは区長がおっしゃるとおりだ。それ以上は決められまい。

 私も電子投票はまだ体験してはいない。しかし、疑似体験はネット上でできる。新見市のホームページでもできるし、また電子投票を普及させている私的団体のホームページ上でも、クリックするだけで実際のものにかなり近い形で体験できる。

 電子投票の最初の導入時には、投開票作業にあたる職員の配置や研修費で費用がかさむかもしれない。しかし、経験した多くの自治体や国の体験談を聞く限り、開票作業の迅速化によって数回で導入費用のもとがとれる効果が出てくるようだ。もう少し長いスパンが必要なのかもしれない。ぜひ積極的に関心を持っていただきたい。

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